今日の日記

2003年8月22日
昨夜。びろうな話で恐縮だが、携帯電話を自宅の便所に落とした。用を足した後、水を流そうと体を前にかがめた瞬間、胸ポケットからすべり落ちたのだ。コンマ2秒ほどの逡巡の後、便器の中から拾い上げ、洗面台で軽く水洗いし、速攻タオルでふく。不幸中の幸いは、大の後では無かったことだ。あっちゃーやべえよ、とフリップを開くと、替わらぬラッシーのつぶらな目。ラッシーってのは俺がつけた待ち受けのアザラシの名。ほっと一安心し、充電器に差して眠りについた。翌朝。DOKIDOKIしながらフリップを開く。画面が真っ白だ。ボタンを押すと、背後霊のようにラッシーの顔の輪郭が浮き上がる。怖い。文字はほとんど全く読めない。別な電話で携帯にかけると、着信はする。だが、出ようとするとブツッと切れる。携帯から電話をかけようとしても、ツーッツーッと鳴るだけ。液晶表示が見えないから、誰がかけてきたのかもわからない。かけかえすこともできない。これでは知人が俺に連絡を取りたがっても出られず、それどころか誰が俺にかけてるのかも分からない。でも友人にはそんなこと分からないから「アノ野郎、俺が電話したのに無視してやがる。太い奴だ。なめた奴だ。今度会ったらぶん殴る」ということになりかねない。困った。ま、何とかなんだろ。そういう事情なので、この日記を読んでる友人の皆様(数人)、もし至急の連絡があったらメールください。あ、携帯メールは読めないからね。

今日の日記

2003年8月21日
■気象庁に苦情が殺到しているそうだ。週末の天気予報が外れて雨だったからだ。「楽しみにしていた行楽がおじゃんになった、どうしてくれるんだ俺の私の週末を。バカンスを。この恨みハラサデオクベキカ」というワケだ。天気予報は間違うな、というその精神構造がすごい。いわんや電話をかける行為をや。

本。

「ナショナリズムの克服」森巣博・姜尚中。中オモロ。
「文章読本さんへ」斎藤美奈子。オモロイ。
仕事でこの半年間、ずーっと頭を悩ませていたことがあったが、今日、思いきって先方に連絡をしたところ、拍子抜けするくらいアッサリ前に進んだ。悩んでたのがバカみたいだ。

この道を行けば

どうなるものか

危ぶむなかれ

危ぶめば道はなし

踏み出せば

その一足が道となる

迷わずにゆけよ

ゆけばわかる

という一休禅師の言葉通り。いつもこうありたい。

今日の日記

2003年8月19日
■昨夜コンビニで何気なく雑誌の棚を眺めたら、「衝撃袋とじ!加藤あい温泉入浴ビデオ入手!」の文字が目に飛び込んできた。「BUBKA」というその雑誌を思わず手に取り、まじまじと表紙を眺める。加藤あい嬢と思しき人物が、露天風呂に入っている写真。胸には、モ、モザイクがかかっている。自分でも理解できない衝動に突き動かされ、気づくとレジで金を支払っていた。家までの10分間があんなに長く感じたことはない。途中、街灯の下で袋とじを破ろうかと思ったくらいだ。家に入って、靴を脱ぐのももどかしく、部屋の中央に正座。カッターを取り出し、慎重に、細心の注意を払って、袋とじを破る。

表紙の写真と同じ。全く同じ。モザイクつき。袋とじにする意味、無し。

■何はともあれ隠し撮りなどという卑劣な行為は断じて許されるべきでない。ましてやそれを利用して雑誌を売ろうという魂胆がけしからん。じゃ、買うなって。

■しかし、どう見てもあれは、本人である。何だかせつない気分だ。これが恋ってやつか。違います。

今日の日記

2003年8月16日
本来で有ればこの休日、晴耕雨読、東に諍いがあればくだらないからやめろと言い、西に老いた母がいればこれを背負い、地球平和について考え、戦後民主主義の誤謬と希望について論文の一つも書く予定ではあったが、結局のところ、ダメ犬の散歩と昼寝に終わった。ついでに酒精もとりすぎ、ちょっとお腹が下り気味である。うぷぷ。

が、無駄飯を食らってばかりいたわけではない。ちゃんと、姪っ子の相撲の相手や甥っ子のおしめを代えたりしつつも、高校時代の恩師を囲む会を企画立案、連絡などに奮闘していたのである。その会が明日、ある。詳細は後日。

本。

舞上王太郎「熊の場所」。
町田康「実録・外道の条件」
町田康「テースト・オブ・苦虫」
開高健「最後の晩餐」

いずれもオモロかったです。


今日の日記

2003年8月14日
実家でやんす。ういー。酔っぱらったなり。焼酎をたくさん飲みました。ビールもたくさん飲みました。げへへ。

えーと。こないだは鬼女4人と酒を飲んだ。げは。「おめ。おっぱいが8つもあって幸せだろ。ゲボハハハハ」なんて怪物くんの親父みたいな笑い声をあげる高校時代からの悪友にしこたま飲まされノックダウン。どうやって帰ったか覚えてない。

んで、いまは実家で平穏無事に過ごしております。

ばいおさん

ありがとうごぜえます。やっぱそうですか。そうだよなあ。何も意図がなければわざわざねえ。でへ。んでも調子に乗らずに精進しますだ。

がああ。酒を飲みすぎた。爆睡しますです。

今日の日記

2003年8月12日
■昨夜。麻布で某大物と打ち合わせ。後、六本木ヒルズの脇を通って帰宅。デカいビルだにゃあ、無駄に光ってるにゃあ、というのが感想。展望台に登るのに2000円かかるそうだ。絶対来年には値下げしてる。間違いない。

■で、六本木にはホントに犬を連れてる人が多い。夜の10時過ぎだっつうのになぜか犬の散歩をしている。某友人がそれについて書いてたのを勝手に引用。

「犬を連れた輩が多いのね。なにもあんなに混雑した所で、犬を散歩しなくてよいのにねえ。俺は近所に住んでいる、ってことを強くアピールしたいのでしょうけれど、それなら、Tシャツ&短パン&健康サンダルでコンビニ弁当でもぶら下げていればよいじゃないですか。「大五郎」等、どうしようもない焼酎の巨大ペットボトルを抱えていると、更にご近所度アップだと思いますよ。」

その通りである。これが見識というものだ。

■明日から休みである。ハワイに行く予定だ。トロピカルドリンクを飲みながらミステリーなどを読むつもり。ウソ。実家に帰るだけ。ダメ犬の散歩と昼寝くらいしかやることが無い。ウソ。英語の勉強をする。TOEICの点数を900点まで持っていきたい。受けたことないけど。ちなみに英検4級は中2のときにとったが、それってTOEICだと何点くらい? つうかTOEICって綴り、合ってるかな。

激動の予感が

2003年8月11日
■過日。手作りクッキーを女人より賜る。平伏して頂戴奉り候。ここで浮かれてはならぬ。過去の苦い記憶の数々を思い出せ。冷静に状況を判断せよ。

なぜ俺にクッキーをくれたのか。考えられる理由としては。

単に作りすぎて余っただけ→俺だけにくれた。
気まぐれ→わざわざ誕生日にくれた。
何となく→メッセージカードがついてた。
毒殺しようと思って→まだ生きてる。

久々にモテているのだろうか。

今後の経過を刮目して待つべし!(ネタにしてしまうところが未来を暗示)


■週に一回ジムで5キロ走る。最初のころは30分を目標にした。時速でいうと10キロ。軽いジョギングくらいのペースだ。1年たって、22分42秒まで時間を短縮した。時速でいうと12〜14キロを行ったり来たりしている。時速10キロを、12キロに上げると言うことは、出力を20%上げるということである。車で考えたら、すごい性能の向上だ。やるじゃん俺、と思ってたときに、元陸上部の男性と知り合った。「5キロってどれくらいの時間で普通走るの?」と聞いたら、「うーん、現役の頃は15分くらいですかねえ。一キロ3分のペースが普通なので」という返事が返ってきた。

■文藝春秋に掲載の芥川賞作品『ハリガネムシ』を読む。なかなか面白いがいささか暴力描写に気色が悪くなる。話に救いが無い。

ついに『A』を見た

2003年8月7日
■アルバイトの男にいきなり誕生日プレゼントをもらった。映画『A』のDVDだ。先日、「この映画を見るためだけにDVDプレイヤーを買うことを決意」と書いた映画である。

「めちゃくちゃ嬉しい。本気で嬉しい。ホント有難う。君は素晴らしい男だ。俺に出来ることがあったら今後なんでも言ってくれ。あっ! でも俺のウチにDVDプレイヤー無いんだよね。どうせだったらプレイヤーが欲しかったな。ソフトは自分で買えばいいし」と言ったら、「返してください。やっぱりプレゼントやめます」と『A』を取り上げようとするので、ゴメンゴメン冗談だよ、とか言いながらしばしもみ合う。

仕方ないので帰宅後、近くのレンタルビデオ屋に売っていた聞いたこともないメーカーのDVDプレイヤーを購入。8050円。で、見ました。

結果。

人生が『A』以前 と
   『A』以降 に

分かれた。

すごすぎる。必見という言葉を100回繰り返しても足りない。


■元スケ番の友人から誕生日祝いのメールが来た。

返信で「ありがとう。来年は幸せになりたい」と書いたところ、
以下の返事が。

−−−−−−−
小生の記憶が正しければ。

>来年は幸せになりたい。

去年も聞いた。
一昨年も聞いた。
その前年も聞いた。
その前年の更に前年も聞いた。
−−−−−−−

情けない。

久々にポエマー

2003年8月6日
■金子光晴の詩集を読む。影響されて詩が書きたくなった。そんなわけで書きます。

「夏」

夏が来た。

昨日来た。

はんぱなく暑かった。

やばかった。

汗がどろどろ出た。

アイスが食いたくなった。

夕方から雨が降った。

どしゃぶりだった。

洗濯物干してきちゃった。


■「すごく気持ち悪い男からちょっかいを出されていて死ぬほど気味が悪い」という相談を、とある知人から受ける。が、どうしようもない。モテない男の恋愛は最近では「ストーカー行為」と呼ばれる世の中だ。「キレる人が増えてるから気をつけた方がいい」とアドバイス。アドバイスになってない。

白髪を抜く日々

2003年8月4日
■日曜。ガンジー似の元同期の男と渋谷で会う。よれよれの半ズボンとティーシャツと草履で現れた奴の一言目は「街のファッションリーダーって感じやろ」。電話したとき、元気でやってるか、と聞いたら「おう。1日100円で暮らしてる」と言っていたので、どうせスカンピンなんだろう、仕方ない奢ってやるかと思ってたら、「明日30万入るねん」とぬかす。何で?と聞くと、「○○新聞に小説の連載が決まった」と言うではないか。○○にはある都道府県が入る。ホントかよ。さらに続けて「文○界にも短編が載るかもしれん」とのこと。こいつなら作家になれるかもな、とは思っていたが、それにしてもできすぎだ。変わったところと言えば、元々前頭部が平均より広い男だったがさらに額が広くなっていた。小説書く意外は最近何やってんの、と聞くと「1日2時間は白髪を抜いている」とのこと。鏡の前で狙いをさだめて白髪を抜くそうだが、あ痛!と抜いた髪が真っ黒なことがよくあり、死にたくなるそうである。「ホンマ光の加減っちゅうのは恐ろしい」とのこと。

■石田衣良『うつくしい子ども』読。13歳の中学生が9歳の女の子を絞殺。少年Aの兄(14歳)が事件の真相を明らかにするという話。面白い。

■リリー・フランキー『増量・誰も知らない名言集』読。笑える。

今日の日記

2003年8月2日
SPA!の伊東明のコラムが面白かった。以下抜粋。

<女性同士では、まるで挨拶の「おはよー!」ぐらいのレベルで「あー、なんか今日かわいいねえ」「今日の髪型ステキだねー」「そのバッグすっごいかわいいー」→「うわー、ありがとう。でも〜ちゃんのそのシャツもおしゃれー」とか言い合ってるものだ。男からすれば、聞いているこっちがこっぱずかしくなる。ところがそれは、女性同士では“マナー”レベルの問題なのである。言って当然、言わなければ人間失格ぐらいの話なのだ。>

確かに。電車とかで隣のコギャル同士のこういう会話を聞いてると、脳がゲル化していくような脱力感に襲われる。また抜粋。

<男同士で「おまえ、そのYシャツ素敵だな!」→「いや、おまえの靴こそ素敵だよ」「今日はやたらとハンサムだな」→「でも、今日のおまえもなんかセクシーだぜ」。

気持ち悪い。>

こんな会話してる男二人とファミレスで隣り合わせたら、ナタデココ6人前をハチャメチャに貪り食いたくなるだろう。

先日、まあまあ混んでるエレベーターに、友人のNと二人で乗ってたら、いきなり「今日のお前、カレー臭いな」と言われた。周りの人よ、俺を見るな、と叫びたくなった。リアルな男同士の会話とはこんなものだ。

今日の日記

2003年7月31日
■昼ご飯はうなぎ。

■『少年計数機・池袋ウェストゲートパーク2』。面白い。

■さんまのカラクリテレビでやってる「サラリーマン早押しクイズ」に出たい。

■めざましテレビって芸能ニュースばっかりだ。考えてみればニュース解説とか全然ない。生ニュースだけ。頭が悪くなりそうだ。しかし、お天気お姉さんのチカちゃんを見たいがためにチャンネルを合わせてしまう。一日で一番幸せな時間かもしれない。

■会社と家の往復の毎日なので、

1.食ったもの
2.読んだ本
3.見たテレビ

くらいしか書くことがありません。ペネロペ・クルスに告白されるとか阪神にドラフト3位指名されるとか起こったら面白いんだが。ペネロペってよく知らないんだけどね。書いてみただけです。

今日の日記

2003年7月30日
■昼飯は鰺たたき定食。食いながら石田衣良『4TEEN』(新潮社)を読む。14歳の少年4人の短編集。鰺たたき食いつつ涙が止まらねえ。

■そういえば自分も14歳だった。中2だった。トランクス派でなくブリーフ派だった。ファミコンでなくセガ派だった。「好きな子なんていねえよ」と言いつつ仲間と深夜、自転車でクラスメイトの女子の家の近くを徘徊していた。で、ジャンケンに負けた奴がピンポンダッシュして、その子が出てくるかどうかドキドキしながら待ってた。今だと捕まるなこれ。

で、中2の夏といえば、あのテニスコートだ。夏休みに入って数日がたった頃。友人の船橋と広木が、クラスの女子2名を誘い、山の中のキャンプ地でテニスをするらしい、との情報をつかんだ。それも俺達に秘密で。許せねえ、と憤った俺と関、四谷の3人は、早朝6時に集合し、ほっかむり、サングラスを身につけ、鎌を持ち、草刈りアルバイトの変装をしてテニスコートの周辺を見張ったのだった。

やがてやってきた4人。楽しそうにテニスに興じている。俺は草を刈るふりをしながら、使い捨てカメラで隠し撮りをしてたが、怪しすぎてすぐに見つかった。結局、俺が4人の記念写真を撮ってやり、あとで焼き増しするわーなんつって、自転車で帰った。男3人で。中2の夏の思い出、それだけ。

全く成長してません。

今日の日記

2003年7月29日
■今年はじめて蝉の鳴き声を聞いた。ふとウインクの「淋しい熱帯魚」を歌いたくなった。

■本。

中村彰彦『烈士と呼ばれる男−森田必勝の物語』(文春文庫)。三島由紀夫とともに腹を切った早大生のノンフィクション。スーフリ和田と同じ大学っつうのがね。何ともね。

富坂聰『潜入 在日中国人の犯罪シンジケート』(文春文庫)。上に続きウヨっぽいが足を踏み入れては行けない地域の勉強になった。歌舞伎町コワイ。

小林信彦『僕たちの好きな戦争』。読みかけ。2年くらい前に古本屋で買ってほっといた本。太平洋戦争前のごく一般的家庭が戦争に高揚し熱狂する様子が描かれてるそうで、いまって何か戦前ぽいよね、という最近の風潮を検証すべく。まだ25ページくらいしか読んでないけど面白い。

今日の日記

2003年7月28日
■土曜。隅田川花火大会。歩行者天国になった路上で見る。花火はビルの影で上半分しか見えず。浅草の友人宅へ徒歩。10人くらい友人集結。ビールと泡盛を飲酒後カラオケ。記憶無。浅草の街を半裸で練り歩いたる後、気絶眠。

■日曜。目覚めると12時過ぎ。ほかの連中は始発で帰宅とのこと。吾輩は駄目人間である。痛む頭を抱えてんぷら定食を食したり。午後カリスマに邂逅。夕、カルボナーラを食したり。9時半即寝成仏。

今日の日記

2003年7月25日
■とくに書くこともないのでダジャレでも書こう、と思いまして、実際ある程度書いたんですが、昼飯食いにいって見返したら、死ぬほどつまらなかったので全部消しました。ロックンロール。

■朝、新聞読んでたら、須藤元気(K−1選手と言ってよいものか)が通り魔に刺されたという記事が出ていて、びっくりしたんだけど、多分その記事を書いた時点では本人のコメントがとれてなかったに違いなく、書くことが無かったのか「腕をあげて相手の注意をそらしながらパンチを繰り出す『久しぶりパンチ』などが得意技」なんて書いてあって微苦笑。

■サラリーマン川柳でも書きます。

フリスクを 噛んでもばれる 二日酔い
傘忘れ 買ったビニ傘 また忘れ
電車内 冤罪予防で 両手あげ
ホカ弁の 全てのメニューを 制覇する
携帯の メールを意味無く チェックする
ドラえもん のび太の恐竜 泣けるよね
もみあげを ヒゲと一緒に そり落とす

今日の日記

2003年7月24日
■昨夜。久しぶりにコンビニ弁当の夜食。アパートでひとり豚生姜焼き弁当をチンして、発泡酒と一緒に食ってると、しみじみ、「ビッグになりたい…」と思う。たまにはビフテキが食べたい。そういやビフテキって最近の人言わないな。のび太か俺は。

■忙しい。

最近読んだ本

2003年7月23日
最近読んだ本

森達也『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』(晶文社)。オウム事件から日本社会が変質した、その変質は他でもなく我々自身の変質である、ということが繰り返し繰り返し書いてある。重要なのは変質に気づくこと、そのためには「自覚的になること」「主語を自分にすること」だと森は語る。書いてあるのはそれだけ、と言ってもいい。黙殺され続けてきた映画『A』と『A2』がDVDで発売されるというチラシが本に挟んであった。それを見るためだけにDVDを購入することを決意。

石田衣良『池袋ウェストゲートパーク』(文春文庫)。ドラマのせいで子供向けというイメージがあり敬遠していたが俺の不明だった。分かりやすいし面白いし新しい。解説の通り海外推理作家の影響を強く感じる。キャラクターの造形が見事。

舞城王太郎『暗闇の中で子供』(講談社ノベルス)。全作『煙か土か食い物』の続編にあたる。ラストがムチャクチャすぎる。当然続編が書かれるのだろうが果たして収斂できるか。

松尾スズキ『大人失格』(光文社文庫)。通勤電車・昼休み・就寝前など堅いのが読みたくないときに最適。

連休で死にかけた

2003年7月22日
■日曜。

8:00。起床。
12:00。コンビニで週刊現代を立ち読み。「衝撃!加藤あい全裸入浴ビデオ」に衝撃を受ける。おにぎりと豆乳を買う。
15:00。新宿着。「モテナイ野郎三人組、富士山登っちゃうぞツアー」のためだ。同行するのはOとF。どちらも24歳。Oは登山が趣味。Fは大学時代スキーサークル。文化部の俺には心強い味方だが、誰も富士登山の経験は無い。16時50分発のバスに乗り込む。行きのバスの中では菓子を食べたりして楽しい時間を過ごす。バカ話をしながらも、頭の中では「失恋の傷心を癒すために富士山に登りにきた25歳OL3人組と知り合わないかな」とか考えていた。あとの地獄も知らずに。
18:30。富士山五合目着。意外と近い。食堂に入り不味くて高い焼き肉定食を食べる。カレーが千円。
20:00。出発する。夜の登山は初めてだ、というより山登り自体初めてなんだが。ま、小学生でも登ってんだから楽勝だろ。最初は下り坂。ピクニック気分だ。途中まで馬に乗って登れるそうで、馬糞の臭いが漂っている。もちろん夜は馬はいない。
20:15。登山道入り口に着く。傾斜が結構きつい。駅の階段を延々登り続ける感覚。砂利が細かくて足がとられる。ときおり花崗岩がゴツゴツむき出しになった地点があり、四つん這いになって登る。
21:15。六合目。俺は富士山をなめていた。こんなにキツイとは思わなかった。体中から汗が噴き出る。俺以外の登山客はほとんど全て杖を持っている。下で見たときは、けっジジくせえとか思ってたのだが、今ではどっかに杖のかわりになるような木の枝が落ちてないか真剣に探す、も無い。植物の姿が消えた。膝がガクガクする。まわりの登山客は、みな装備が本格的である。俺はといえばワークパンツに普通のスウェットパーカー。ちょっとコンビニでも行ってくるわって感じ。上は寒いと聞いていたので薄手のジャンパーは持ってきているが、手袋は無い。懐中電灯を俺以外の全員が持っている。自分の足下すら見えない状況なので考えてみれば当然だ。「毎年何人か落っこちて死んでるんですよ」とO。この傾斜で足を踏み外したら確かに死にかねない。というかどう考えても死ぬ。
22:45。七合目。急に寒くなる。同時に風が強くなり、ミルク色のもやがあたりを覆い始めた。この辺から本格的に岩肌があらわになり、四肢を使わねば登れない場所が頻繁に出てくる。山小屋が標高200メートルおきくらいに数軒ずつあり、そこで休む。500ml入りペットボトルの水が500円。ここまで人力で持ってきていることを考えればそれくらいするのは当然だ。懐中電灯が950円で売っている。買うかどうか迷ったが、同行の二人のライトで何とかここまで進んできた。これからも大丈夫だろう、と思い、そこでは買わなかった。山小屋を出て、岩にかじりつく。手元が見えない。急に勾配がきつくなり、危険を肌で感じる。うっかり岩を踏み外したら滑落の恐れがある。結局、20メートルほど登ったところに別の山小屋があり、そこで懐中電灯を買うことを決意する。親父に値段を聞くと「2000円。電池付き」と無表情で答える。すぐ下の山小屋では950円。だが、その20メートルを下りることは危険すぎてとても出来ない。ため息をついて懐中電灯を購入する。
24:00。八合目についた。ヘトヘトのボロボロである。三人とも言葉が少ない。10分登っては小休止を繰り返すようになっていた。俺達以外の登山客も疲れきった顔で休んでいる。山小屋には宿泊施設があり、そこで泊まって翌朝早く出発するというのが一般的なようだ。上に行くに従って、登山客の姿を見るのが少なくなっていったが、みんな適当な山小屋に泊まるためだと分かった。だが、俺達は一刻も早く頂上を目指したかった。どうせなら、頂上の山小屋で休みたかった。そこには登山好きの女子大生グループとかがいるはずだ。で、みんなでトランプとかして遊ぶのだ。そこまでがきつすぎただけに、少しでもこの苦しみを早く終わらせたかった。それが全ての間違いのもとだった。
24:45。九合目。たぶん、九合目。八合目から頂上までは山小屋がない。文字通り真っ暗である。登山客の姿もまったく見なくなった。少し勾配がゆるやかな地点で「休憩しよう」と俺が呟くと二人も安堵したように荷物を下ろす。電池の消耗が勿体ないのでライトを消す。登り始めてから終始曇っていた空が、一瞬晴れて、星空が広がった。地上で見る星とは全く違う美しさだ。山の稜線が空を斜めに、どこまでも真っ直ぐ分断している。火星か月にでもいるようだ。広い宇宙に三人だけしかいないように思えてくる。「ちょっといいこと言っていいすか」とF。「あ、俺も何かそういう気分。聞かせてよ」。「山登りと仕事って似てますよね。疲れるしたいへんだけど登るしかない。それも一歩一歩自分の足で」。「言えてる」。だからってどうだってことも無い。頂上は濃い霧で全く見えない。いったい何時まで登ればいいんだ。
25:00。突風が吹いてきた。温度が急激に下がっている。吐く息が白い。俺のリュックについている温度計をFに見てもらう。「4度です」。7月の中旬なのに。あたりに人がまったく無いので、もしかすると登山道を間違えたのかもしれないと心配になる。Oも同じ心配を抱いたようで「迷った可能性がありますね」と言う。不安が広がったが「でもとりあえず上に登っていけば、頂上には着くはずだ」と迷いをふりきる。寒くてじっとしていると耐えられない。
25:30。濃いもやで5メートル先も見えない。そろそろ体力も限界である。と、そのとき、先頭のFが叫んだ。「鳥居が見えます!」。動かない足を叱咤しながら必死で登る。頂上だ! ついに、着いたのだ。心からホッとする。地面が平らなのがこんなに素晴らしいことだなんて知らなかった。一刻も早く、山小屋に入ろう。50Mほど先の山小屋に、足を引きずりながら駆け寄る。と、その下に二人の男が立ちつくしている。登山客だ。山小屋の灯りは消えており、何も音がしない。「もしかして、中に入れないんですか?」。男二人はふるえながら頷いた。「もう1時間ここにいます」。ここからが地獄の始まりだった。
26:40。いまの気温、2度。凍死、という言葉が頭を駆けめぐる。たしか、夏でも直腸の温度が二十何度かに下がると死ぬとどこかで読んだ記憶がある。手袋を持ってこなかったことを心の底から後悔する。指先がビリビリ痺れている。氷のように冷たい雨が体を濡らす。三人で軒下に身を寄せ合い、お互いの体温で少しでも暖まろうとする。自動販売機で温かいココアを買う。400円。腹の下に入れて、内臓を暖める。ガタガタ震えが止まらない。Fが体育座りしたまま顔を俯いている。「眠るな!寝たら死ぬぞ!」と起こす。人生でこんな言葉を口にするとは、想像もしてなかった。俺はみんなを眠らせないために、歌を歌うことにする。「アーイアイ、アーイアイ、アーイアイ、アーイアイ、おさーるさーんだよー」とか「南のー島の大王は、その名も偉大なカメハメハ」とか「サマードリーム、君ーはー」とか、なるべく夏っぽいやつを。

俺の歌にOとFものってきた。「おいかけろ!ドラゴンボール!世界で一等ステキな秘密。この世ーはーデッカイ宝島、そうさーいまこそ、アドベンチャー」とOが歌えばFは「ビーマイベイベービーマイベイベービーマイベイベービーマイベイベー」と布袋の歌を歌う。俺がフリつきで「セーエーラー服を、脱ーがーさーないで」と歌ったら彼らはおニャン娘クラブをリアルタイムでは知らないんだよね。日本一の山のてっぺんで、凍死しそうになりながら、俺、ジェネレーションギャップ。「I・NO・KI、ボンバイエ、I・NO・KI、ボンバイエ、I・NO・KI、ボンバイエ、I・NO・KI、ボンバイエ」とFが大声で叫び始めた。俺も「チャ〜ラ〜ラ〜ラ〜」と間奏を合わせる。さすが猪木。身体が僅かに暖まってきた。クソ寒さを少しだけ忘れられる。パーーララーパーラーーララー、とメインテーマを歌い出したところで、俺たちの背中の戸口が、ドン! と叩かれた。うるさいから静かにしろってか。だったら中に入れろよこの人でなしが! それから1時間、「浜崎あゆみの海の家に行けばよかった…」と考えながら過ごす。

27:30。つまり朝の3時半。寒さのあまりベンチで踏み台昇降運動を始めた頃、続々と登山客が頂上に着きはじめた。彼らはゆっくり休養をとったため元気だ。3時45分、ご来光を見に来る客のために、やっと、ホントにやっと山小屋が開く。助かった。凍死しなくて済んだ。全ての人に感謝。富士山バンザイ。「食事をする人だけどうぞー」と言われるが、全然オッケー、1万円払ってもいいよ。狭い山小屋の中は、登山客ですぐに埋まった。800円のみそラーメンを食す。ぬるくて具は何も無かったけど、あんなに美味いサッポロ一番は一生食えないと思う。生きてるってだけで、人生はステキだ。雨がパラパラ降ってきて、結局、日の出は見られなかった。同行したOはまた登るって言ってたけど、俺は、もういいや。

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