平川克美氏のブログの文章を読んで、言葉の持つ「すごみ」に背中がぞくっときた。ぜひ全文読んで欲しいのだが、最後のところだけ勝手に引用させていただく。
ーーー
すこし前、朝日新聞にライブドアの堀江の言葉が踊った。
「金で買えないものなんかない。」
悪い冗談だ。
もし本気で言っているとするなら度し難い馬鹿である。
(中略)

堀江くんよ、違うだろ。
金で買えるものもあるだろう、だろうが。
世の中、ほとんどの価値あるものは、
残念ながら金で買えない。
ーーー

まったくその通りだ。

金といえば、最近こんな事があった。

仕事を終え、家に帰る途中、16,7歳の男に「すみません」と呼び止められた。
道でも聞くつもりだろうかと思い、自転車をとめた。

男:「あのー、600円、貸してくれませんか」
俺:「は? どうして」
男:「家に帰りたいんですけど、財布を落としちゃって」
ほほう、と思った。
時間は夜の10時過ぎ。風が強く寒い夜だった。
俺は子供といってもいい男の顔をまじまじと眺めた。
服装はジャージっぽい上下。痩せている。
何だか怯えているような顔つきをしていた。
俺:「家に電話してみたらどうだい。親が迎えに来てくれないの」
男:「電話しても誰も出ないんです。みんな出かけちゃってるみたいで。必ず返しますから、お願いします」
俺:「……ふーん。家はどこ?」
男:「○○市です。駅から遠いのでバスに乗らなきゃならなくて…」
男は電車で30分ほどかかる駅名をあげた。
俺:「君は学生か」
男:「はい、高校2年です」
俺:「俺で何人目だ、頼んだのは」
男:「4人目です」
俺:「本当だったら貸してやらないこともない。学生証とか君の名前と住所が分かるものがあれば見せてくれ」
男:「……ないです。財布の中なので」
俺:「そうか……」
俺はその時点で、(まあ、90%ウソだろうが、なんかこいつ、可哀想だな。やってもいいか)と考え始めていた。たまには他人に親切にするのも、悪い気はしない。一応返してもらう約束をしておいて、本当に返してくれたら御の字、現れなくてもまあいいか、と思うくらいの金額だ。

その間、5分くらいのやりとりだったろうか。俺が財布を取り出そうかな、と思ったとき、安いホストのような趣味の悪いスーツを着た、22,3歳くらいの男が急に現れ、無言で俺と話していた男の手を引っ張っていった。俺は、呆然とそれを眺めていた。二人は道路を渡って、路地に入り見えなくなった。

若い男が怯えたような顔をしていたのは、恐らく命じられてやってたからだろうと思う。監視役の男がどこかからこちらの様子を見ていて、時間がかかっているのにイライラして連れ戻したんだろう。あるいは俺のことを面倒くさい人間(例えば私服の警官とか)に思ったのかもしれない。真相はわからんが、あの若い男は今頃なにやってんだろうかと、その場所を通る度に思い出す。それにしてもたかが600円を得るために、そんなことを年端もいかぬ子供にやらせる男には、言いようのない「貧しさ」を感じてならなかった。

・内田樹氏がブログで、石原慎太郎都知事が構想する新大学「首都大学東京」(通称、首大だそうだ・笑)をもうこれ以上ないくらい的確に批判していて、思わず笑ってしまった。最近、このお二方の書くものに、はまってしまっている。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

最新のコメント

この日記について

日記内を検索